Guide — 選び方

ブライドルレザーとは:白い「ブルーム」の正体と、英国の作り手、ブランドごとのお手入れの違い

編集 Sakura MATSUI公開

In short — まずお伝えしたいこと

ブライドルレザーは、もとは馬具のために作られた、ロウを何度も染み込ませた牛革です。表面の白い粉「ブルーム」は、染み込ませたロウが表に出てきたもので、拭いたり磨いたりするうちに艶へと変わってまいります。ふだんは布やブラシでの乾拭きが基本です。オイルやクリームを使う時期や、防水スプレーを使ってよいかは、ブランドによって案内が分かれますので、お手元の品のブランドの方法に沿っていただくのが安心です。

麻の布の上に置かれた深い緑色の革の長財布と、木の柄の馬毛のブラシ

はじめて手に取ると、表面がうっすらと白く粉をふいたように見えて、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。それが、ブライドルレザーならではの「ブルーム」です。このご案内では、英国の革の仕上げ会社と革製品ブランド、国内の革製品ブランド4社が公式に公開している説明をもとに、ブライドルレザーの成り立ちと、お手入れの基本、ブランドによって異なる案内をまとめました。

以下は、各社が公開している説明を要約したものです(2026年10月12日確認)。

名前は、馬具に由来します

古い馬具部屋の木の掛け具に吊るされた、真鍮の金具の付いた革の馬勒

「ブライドル(bridle)」とは、馬の頭部につける馬具のことです。土屋鞄製造所は頭から首にかけて装着する部分、GANZOは面繋(おもがい)やハミ、手綱などをまとめた呼び名だと説明しています。大きな負荷がかかっても切れないよう、堅牢に仕立てた革がブライドルレザーで、英国で一般的なのは、もともと丈夫なヌメ革(植物タンニンで鞣した革)に、ロウや油脂を塗り込んだものだといいます(土屋鞄製造所)。

もとになるヌメ革については、「ヌメ革のご案内」にまとめております。

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GANZOは、ロウを引くのは、雨の多い英国の気候や、馬の汗・唾液で革が弱るのを防ぐためだったと紹介しています。英国ウォルソールで1875年に馬具工房として創業したWhitehouse Coxは、第一次世界大戦をきっかけに一般向けの革小物を作り始め、1940年代以降、ブライドルレザーを革小物に本格的に取り入れたと説明しています。

白い粉「ブルーム」の正体

表面に白いロウが浮いた部分と、磨かれて艶の出た部分がある深緑の革

表面の白い粉「ブルーム」は、革に染み込ませたロウが、表に染み出したものです(キプリス、土屋鞄製造所の説明より)。ブライドルレザーには、ロウを何度も染み込ませているためです。ココマイスターは、ロウを手作業で革の内部まで浸透させて繊維を引き締めており、その浮き出たロウが表面の白いモヤだと説明しています。

ブルームは、拭き取って磨くうちに表面が整い、光沢へと変わっていきます(キプリス)。土屋鞄製造所は、使い込むほど色味が深まり、ロウがなじんで、琥珀のように奥行きのある光沢をまとっていくと紹介しています。

英国の作り手と、各社の説明

れんが壁の古い革の仕上げ工房と、木の台に広げた大きな革、ワックスの缶とブラシ

ブライドルレザーの作り手としてよく名前が挙がるのが、英国ウォルソールのSedgwick社(J&E Sedgwick)です。同社は1900年の創業で、自社を、植物タンニンで鞣した革にロウや油脂を加えて仕上げる「カリアー(currier)」だと説明しています。

同じ革でも、作り方や期間の説明は、会社によって異なります。

項目Sedgwick社(自社の説明)GANZOの説明土屋鞄製造所の説明
原皮・鞣し同社を共同で所有するアイルランドの会社が原皮を選び、同じく共同所有者であるドイツのタンナーのピット槽(鞣し液の槽)で3か月、植物タンニンで鞣す植物タンニンの中でも固く仕上がる「オーク」で、「太鼓」と呼ばれるオーク材の機械を使って鞣すヌメ革(植物タンニンで鞣した革)を使う
仕上げウォルソールで、手作業の染色、油脂の加え込み、シボ付けを6週間牛脂・タラの油・蜜蝋を合わせたワックスをブラシで何度も染み込ませ、表面を平らに整え、擦って仕上げるロウを何度も擦り込んで耐久性を高める。表面に白いブルームが出る
かかる時間1枚あたり6か月約18週間完成まで4か月半

説明された時期や、どの工程までを数えるかが異なる可能性がございます。当サイトでは、違いの理由までは確認できておりません。

ブランドごとの、ブライドルレザー

麻の布の上に並べた、深緑・えんじ・紺の革の財布や名刺入れと、茶色の革のブリーフケース

使っている革や、タンナー(革を作る会社)の名前を公開しているかどうかは、ブランドによって異なります。各社の公開している範囲を並べました。

ブランド使っている革(公開されている範囲)
Whitehouse Cox英国でも究極のブライドルレザーを作れる唯一のタンナーの革だけを使っていると説明(タンナー名の記載なし)
土屋鞄製造所J&E Sedgwick社(同社の表記は「J&E セジュウィック社」)のブライドルレザー
GANZOJ&E Sedgwick社(同社の表記は「J&E セジュイック社」)のブライドルレザー。ブリーフケースのAVONシリーズでは、英国のトーマスウェア社の芯通しブライドルレザー
ココマイスター英国産のブライドルレザー(タンナー名の記載なし)。内装にヌメ革やイタリアの革を合わせたシリーズもある
キプリス古くから馬具用の革として使われてきたブライドルレザー

GANZOとココマイスターのシリーズや価格帯は、「GANZOのご案内」と「ココマイスターのご案内」にまとめております。

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お手入れは、ブランドの案内に沿って

白いブルームが浮いた深緑の革の財布を、馬毛のブラシで払っている手元

ふだんのお手入れの基本は、布やブラシでの乾拭きで、各社とも共通しています。GANZOは、もともとオイルやワックスを多く含んでいるため、天然繊維の布やブラシで乾拭きするだけで、ワックスが行き渡り、ツヤを引き出せると説明しています。ココマイスターも、乾拭きや軽いブラッシングで、奥にある革の色味を楽しめると案内しています。

一方で、オイルやクリーム、防水スプレーについては、案内が分かれます。

ブランドブルームオイル・クリーム防水スプレー
土屋鞄製造所付属の馬毛ブラシで落としても、落とさず自然になじませてもよい最初の1〜2年は、オイルがロウに弾かれるため不要。2年目以降は、ブルームを落としてからオイルを。ケアの案内ページでは、Sedgwick社のケアクリームを薄く塗り、一晩なじませる方法も紹介(ブライドルについての記載なし)
ココマイスター乾拭きや軽いブラッシングで整えるクリームは、使える革に限り、乾燥が気になるときに少量ロウが残るブライドルには使わないよう案内
GANZO布やブラシの乾拭きで、ワックスが必要なところに行き渡る乾拭きだけで、あまり手間をかけずにツヤを引き出せる(記載なし)

ブライドルレザーは、乾拭きが基本です。オイルや防水スプレーは、お手元の品のブランドの案内をお確かめのうえでお使いください。

迷われたときは、お手元の品のブランドの方法に沿い、初めてのケア用品は目立たないところで試していただくのが安心です。ケアの流れは、「お手入れの基本」にもまとめております。

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使い始めに、知っておきたいこと

木の棚に置いた深緑の革の財布と、たたんだ濃い灰色の服

土屋鞄製造所は、ブライドルレザーの性質として、次の点を挙げています。

  • ブルームの出方は、一つひとつ異なります
  • 濃い色の洋服に白いブルームが付くと、目立つことがあります
  • 湿気と気温の影響で、梅雨から夏にかけて表面が少しべたつくことがあります
  • 長く使わずに保管すると、温度の差などで、ブルームがふたたび出てくることがあります

雨に濡れたときの対処は「雨に濡れたときのご案内」に、しまい方は「保管のご案内」にまとめております。

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おわりに

窓辺の古い革装の本の上に置かれた、琥珀のような艶の深緑の革の長財布
  • ブライドルレザーは、馬具に由来する、ロウを何度も染み込ませた牛革です
  • 表面の白い粉「ブルーム」は、染み出したロウ。磨くうちに艶へと変わります
  • 作り手として、英国ウォルソールのSedgwick社の名がよく挙がります。かかる期間の説明は会社によって異なります
  • ふだんは布やブラシでの乾拭きを。オイルや防水スプレーは、ブランドの案内をお確かめください
  • 艶やかな「コードバン」との違いを見比べてみるのも、選ぶ楽しみのひとつです
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